サステナブルツーリズム

旅が土地の文化を受け継いでいく力に

更新日 : 2023-01-25

旧大内邸―山里の生活文化継承の拠点として

八女市立花町。
竹林やキウイ畑が広がる山の谷あいの大きな古民家から、にぎやかな女性たちの笑い声が響いています。

そこは、旧大内邸。
明治時代に国会議員を務め、普通選挙法の成立や日中友好に尽力した大内暢三氏の生家です。

一時は空き家となり、老朽化が進み、取り壊し寸前の状態となっていましたが、この建物やそこで紡がれてきた文化、 歴史に思いを寄せる地元有志が中心となり、保存運動を進めた結果、見事に修復され、現在は市の文化財として保存・活用されています。

旧大内邸 外観 イメージ

ここでは、保存運動の中心となった女性たちが、長い間、この地の生活文化を継承していく活動を続けていました。
縫い物、料理、講演会、時にはミュージシャンを招いたコンサート。
たくさんの人が訪ねてくるけれど、周りには食事処がありません。
必要に迫られて、身近な野菜を使った家庭料理を供していたところ、そのおいしさが評判となり、お料理を目指して訪ねてくる人が段々と増え、それは後に「母の膳」と呼ばれるようになりました。

旧大内邸保存会 料理 イメージ
こんにゃく イメージ

ぬか漬け、こんにゃく、山菜料理。
山の料理はどれをとっても、手間ひまがかかります。
町から離れた山里だったからこそ、先人は身近に手に入る自然の恵みを慈しみ、知恵と創意工夫で余すところなく調理し、時には保存し、いただいてきました。
裏庭から摘み取った木々の葉や野の花で彩られ、手間ひまかけた料理がところ狭しと並ぶ食卓は、美しく豊かなもの。
それこそが、この地で受け継がれてきた文化の象徴とも言えるものでした。

旅人も文化の継承者のひとり

そんな「母の膳」や文化的な営みも、保存活動の開始から20年ほどが経つと、メンバーの高齢化や厨房設備の問題から継続が困難となり、休止せざるを得ない状況となっていました。

旧大内邸の周りにも目を向けると、昔ながらのこんにゃく作りや漬物など、食にまつわる文化だけでなく、竹を使った手仕事や農業、山仕事も、程度の差はあれ、このままでは10年後、20年後の姿は心もとない状況です。
料理にしても、手仕事にしても、建物にしても、文化は一度途絶えてしまうと、容易に復活できるものではありません。

旧大内邸保存会 調理風景 イメージ
会話風景 イメージ
旧大内邸保存会 調理風景 イメージ

一方で、近年は社会を取り巻く状況の変化とともに、地方の豊かさに価値を見出す都会の人たちが増えてきました。
「SDGs」という言葉を当たり前に耳にするようにもなり、持続可能性(サステナビリティ)に配慮した生活や旅のスタイルが年々存在感を増してきています。

豊かな自然、飾らない会話、野山の恵みをその土地に受け継がれた昔ながらの方法で調理したお料理をいただく。
農業や手仕事などの生業の場に少しだけお邪魔して、その土地で連綿と受け継がれてきた暮らしの営みに触れる。

「ありのまま」を楽しむ旅は、土地の文化を受け継いでいく力になります。
旅人へのおもてなしは、文化の継承の一助となり、旅人の視点は、新しい気づきと文化のアップデートの契機になります。

その意味で旅人は土地の文化の継承者のひとりとなり、旅が地域を持続可能なものへとするのです。
さぁ、あなたも旅に出てみませんか。
八女でお待ちしています。

文化をつなぐプログラム

旅人も文化の継承者のひとり―そんな思いで、郷土料理体験や農業体験などを通じ、その土台となっているこの地の生活文化を体感できるプログラムをご用意しました。

インタビュー

旧大内邸保存会 田中真木さん イメージ

旧大内邸保存会 田中真木さん

旧大内邸で受け継がれてきた暮らしの営み―古布を使ったパッチワーク、手作りの竹の箸、そして身近な素材を余すところなく使った家庭料理。 ここで続けられてきた種々の活動は、現代の視点で見ると、どれもサステナブルで、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の先駆けとも言えるものばかり。 旧大内邸保存会の田中真木さんに、活動の始まりからお料理の背景にある思いまでをお聞きしました。

アクセス

旧大内邸

住所
〒834-0084 八女市立花町白木3245
TEL
0943-35-0415
営業
9:00~17:00
定休
月曜日(月曜日が祝祭日の場合は翌日)、年末年始
旧大内邸 内観 イメージ